高尾山を訪れる多くの登山者が目にするものの、その深い物語を知る人は少ない隠れた聖地、それが「高尾山仏舎利塔(ぶっしゃりとう)」です。
男坂と女坂の合流点から少し入った「有喜苑(ゆうきえん)」に静かに佇むこの純白の塔は、単なる美しい建造物ではありません。そこには、日本のボーイスカウトとタイ王室の心温まる交流、そして70年近い歳月を越えて守られてきた篤い信仰の歴史が刻まれています。
この記事では、高尾山仏舎利塔の知られざる建立の経緯から、パワースポットとしてのご利益、詳細なアクセスルート、そして「苦抜け門」や「百観音霊場」といった周辺の見どころ、さらには参拝者のリアルな口コミまで、どこよりも詳しく、そして分かりやすく解説します。

この記事を読めば、あなたの次の高尾山登山は、単なるハイキングから、歴史と文化に触れる感動的な巡礼へと変わるはずです。
そもそも高尾山仏舎利塔とは?基礎知識とご利益

仏舎利塔の仏教的意味と重要性
そもそも仏舎利塔とは、仏教の開祖であるお釈迦様(ブッダ)のご遺骨である「仏舎利」を納めるための仏塔です。サンスクリット語の「ストゥーパ」が語源で、仏教徒にとっては最も神聖な信仰の対象とされています。塔そのものがお釈迦様の身体とみなされ、手を合わせることで大きな功徳が得られると信じられています。
高尾山仏舎利塔は、タイ王室から正式に寄贈された本物のお釈迦様のご遺骨(真身舎利)が納められており、日本国内でも特に神聖な仏舎利塔の一つです。
パワースポットとしてのご利益
高尾山自体が強力な龍脈(大地のエネルギーが流れる場所)に位置するパワースポットですが、仏舎利塔周辺は特に清らかで神聖な気に満ちているとされています。期待できるご利益は以下の通りです。
- 心願成就: お釈迦様の絶大な力により、心からの願いが叶うとされる。
- 心身浄化: 俗世の悩みや迷いを洗い流し、心を清らかにするといわれる。
- 国際的な縁結び: 日本とタイの友好の象徴であることから、海外との良縁やビジネスの成功。
- 自己成長: 後述する「十善戒巡り」などを通じて、人間的な成長を促すとされる。
70年の時を超えて。日本とタイを結ぶ感動の建立秘話

この仏舎利塔が、なぜ高尾山にあるのでしょうか。その答えは、今から約90年以上前の、一人の心優しいタイ国王と、日本の少年たちの真摯な姿が織りなした感動の物語にあります。
年代 | 出来事 | 詳細 |
---|---|---|
1930年-1931年 | 運命の出会い | ボーイスカウト日本連盟の代表団22名がシャム王国(現タイ)を訪問。 |
1931年 | 感動と寄贈 | 代表団がプラパトム寺院で五体投地で礼拝する姿にラーマ7世国王が深く感動。 国の宝である仏舎利を特別に分与することを決定。 |
1931年頃 | 日本への到着 | 仏舎利が日本へ到着。一時的に東京都慰霊堂に仮安置される。 |
1956年 | 仏舎利塔の建立 | 多くの人々の尽力により、高尾山薬王院の境内「有喜苑」に現在の仏舎利塔が建立される。 |
ボーイスカウトの祈りが動かした国王の心

1930年から1931年にかけて、日本のボーイスカウト代表団は、タイで最も由緒ある寺院の一つ、プラパトムチェディ(プラパトム寺院)を参拝しました。 その際、日本の少年たちが仏前にひれ伏し、最高の敬意を示す「五体投地」で祈りを捧げたのです。その敬虔で真摯な姿は、参列していたタイ国王ラーマ7世の心を深く打ちました。
国王は「これほどまでに篤い信仰心を持つ日本の若者のために」と、タイ王室が代々守り続けてきた極めて貴重な仏舎利の一部を、日本へ分与することを決断されました。 これは、国と国との外交を超えた、心と心の交流が生んだ奇跡でした。
なぜ高尾山に?薬王院との深い縁
帰国後、この尊い仏舎利をどこに祀るべきか、様々な議論が重ねられました。そして、古くから修験道の霊山であり、多くの人々に親しまれている高尾山が、安置するに最もふさわしい場所として選ばれたのです。
高尾山薬王院は、744年開山の歴史を持つ真言宗の寺院であり、修験道の聖地です。この地に仏舎利塔を建立することは、薬王院にとっても以下の重要な意味を持ちました。
- 聖地性の向上: お釈迦様の遺骨が安置されることで、霊山としての格式がさらに高まる。
- 国際性の獲得: タイ王室との縁により、国際的な仏教聖地としての意味合いを持つ。
- 多様な信仰の融合: 日本の山岳信仰と、タイの上座部仏教の要素が融合し、より懐の深い信仰の場となる。
こうして1956年、高尾山薬王院の全面的な協力のもと、現在の仏舎利塔が完成しました。
現在でも、毎年4月の第1日曜日には、この歴史的なご縁に感謝する「仏舎利法要花まつり」が、八王子地区のボーイスカウト関係者によって執り行われています。
アクセス方法:あなたに合ったルートは?
仏舎利塔は、高尾山のメインルートである1号路の途中にあります。 ケーブルカーやリフトを使えば、気軽に訪れることができます。
1. ケーブルカー利用ルート(定番・楽々)
- 京王線「高尾山口駅」から徒歩約5分、ケーブルカー「清滝駅」へ。
- ケーブルカーに乗車(約6分)し、「高尾山駅」で下車。
- 1号路を薬王院方面へ約15分歩くと、右手に男坂(階段)、左手に女坂(スロープ)の分岐点に着きます。
- どちらを進んでも、坂を登り切ったあたりで合流し、その近くに仏舎利塔への入口があります。
2. 男坂 vs 女坂 ルート比較
ルート | 特徴 | 所要時間(分岐から) | おすすめな人 |
---|---|---|---|
男坂 | 108段の急な石段。 煩悩の数と同じ段数を登ることで浄化されると言われる。 | 約5分 | 体力に自信がある人、修行体験をしたい人 |
女坂 | なだらかな舗装された坂道。 ゆっくりと自然を楽しみながら登れる。 | 約8分 | 初心者、お子様連れ、体力に不安がある人 |
ポイント:男坂の途中、右手に「苦抜け門」への近道があります。 体力に余裕があれば、ぜひ挑戦してみてください。
3. 車でのアクセスと駐車場

車で高尾山へ向かう場合は、周辺の駐車場を利用します。特に紅葉シーズンや週末は早朝に満車になるため、事前の計画が必須です。
駐車場名 | 料金(普通車) | 収容台数 | 特徴・注意点 |
---|---|---|---|
高尾山薬王院自動車祈祷殿駐車場 | 500円/日 | 250台 | 最安値で収容台数も最大。 清滝駅まで徒歩約6分。 現金のみ。 受付時間は8:00-16:00(出庫は24時間可)。 |
市営高尾山麓駐車場 | 平日最大800円 土日祝最大1,000円 | 80台 | 高尾山口駅に最も近い(徒歩1分)。 24時間営業。 クレジット/電子マネー対応。 混雑時は午前8時頃に満車になることも。 |
タイムズ京王高尾山温泉駐車場 | 平日最大800円~ 土日祝最大2,200円~ | 合計90台位 | 温泉施設「極楽湯」利用で3時間無料。 駅から徒歩2~4分。 第1~第3まである。 |
※料金・営業時間は2025年7月時点のものです。最新情報は各公式サイトでご確認ください。
見どころと体験:心をととのえるスピリチュアル体験
仏舎利塔エリアは、ただお参りするだけでなく、ユニークな体験を通じて心を浄化できる施設が充実しています。
① 仏舎利塔本体

インドやスリランカの様式を取り入れた、高さ約18mの美しい純白の塔。 基壇の周りにはお釈迦様の生涯を描いたレリーフや仏像が配置されています。静かに塔の周りを時計回りに歩きながら祈るのがおすすめです。
② 苦抜け門(くぬけもん)

男坂の途中からアクセスできる石造りの門。 四角い穴をくぐることで、9つの苦しみから逃れられると言われています。「三密の道」とも呼ばれ、身・口・意を清める修行の入口です。
③ 迷散筒(めいさんづつ)
心の迷いを散らすための仏具。 中央の筒を時計回りに回すことで、仏教でいう三毒「貪(むさぼり)・瞋(いかり)・癡(おろかさ)」を払い、心を浄化できるとされています。
④ 十善戒巡り(じゅうぜんかいめぐり)
5つの門を反時計回りに巡ることで、10の善い戒めを心に刻む修行体験施設です。 「不殺生(殺さない)」「不妄語(嘘をつかない)」などの教えに触れ、日々の自分の行いを振り返る良い機会になります。
⑤ 高尾山百観音御砂踏霊場

仏舎利塔を囲むように、西国・坂東・秩父の百観音霊場の観音像が安置されています。 各観音像の足元にはそれぞれの霊場の砂が納められており、ここを一周することで、百の霊場を巡礼したのと同じご利益が得られると言われています。
参拝者のリアルな声:口コミ・体験談

実際に仏舎利塔を訪れた人々は、どのような感想を抱いているのでしょうか。個人ブログなどから、年代や国籍を超えたリアルな声を集めてみました。
年代別の感想
- 20代・女性
「パワースポット巡りが好きで訪れました。白い塔が緑に映えてすごく綺麗で、写真もたくさん撮りました。でも、ただ綺麗なだけじゃなくて、十善戒巡りをしているうちに、普段の自分の行動とかを自然と振り返っていて…。心がスッとする不思議な感覚でした。」 - 40代・男性
「家族で高尾山に来た際に立ち寄りました。子供は最初退屈そうでしたが、『苦抜け門』をくぐったり、『迷散筒』を回したりするうちに興味を持ったようです。日本とタイの友好の歴史を子供に教える良い機会にもなりました。」 - 60代・女性
「長年、高尾山には登っていますが、ここに来るといつも心が洗われます。百観音霊場をゆっくりと一周するのが私のルーティン。静かな空間で観音様と向き合っていると、日々の悩みがちっぽけに思えてきます。」
外国人参拝者の感想
- タイからの観光客
「私たちの国の王室から贈られた仏舎利が、こんなに美しい場所で大切にされていることに感動しました。日本とタイの友好の歴史を肌で感じることができ、タイ人として誇らしい気持ちです。」 - 欧米からの観光客
「日本の精神文化の深さに触れられる素晴らしい場所でした。特に、体験型のアトラクション(苦抜け門など)を通して仏教の教えを学べるのがユニーク。静寂の中で瞑想する時間は、最高の思い出になりました。」
仏舎利塔をさらに楽しむ!周辺スポットとモデルコース

仏舎利塔の参拝と合わせて、高尾山の他の魅力も満喫しましょう。
薬王院本堂との連携参拝
仏舎利塔は薬王院の近くにあるため、本堂との連携参拝がおすすめです。
おすすめの順序:
- 仏舎利塔へ:まずは仏舎利塔へ。静かな空間でじっくりと自分と向き合う。
- 薬王院本堂エリアを参拝:その後、本堂や本社で飯縄大権現にご挨拶。
- 山頂へ:心を整えた後、山頂を目指す。
この順序で巡ることで、高尾山の多様な信仰に触れ、より深い参拝体験ができます。
ファミリー向けモデルコース(半日)
小さなお子様連れでも楽しめる、体験を重視したモデルコースです。
時間 | スポット | 活動内容 |
---|---|---|
10:00 | 高尾山口駅 | 集合・準備 |
10:15 | ケーブルカー | 楽々山上へ! |
10:30 | さる園・野草園 | 可愛いお猿さんや季節の草花に癒される。 |
11:30 | 仏舎利塔 | 女坂経由で訪問。「苦抜け門」や「迷散筒」を体験。 |
12:30 | 山頂周辺の茶屋 | 展望台からの絶景を眺めながら、名物とろろそばでランチ。 |
14:00 | 下山 | ケーブルカーまたはリフトで。お土産探しも楽しむ。 |
よくある質問(FAQ)
- Q仏舎利塔の中には入れますか?
- A
通常、内部は非公開です。 お釈迦様の真身舎利が厳かに安置されています。
- Q車椅子やベビーカーで行けますか?
- A
女坂を利用しても最後の部分に階段があるため、車椅子やベビーカーでの直接のアクセスは困難です。
- Q「根本道場」とは何ですか?立ち入りできますか?
- A
仏舎利塔の前にある石で囲まれた広場が「根本道場」です。 修行が行われる神聖な場所のため、一般の立ち入りは固く禁じられています。 柵の外から敬意を払って見学しましょう。
- Q御朱印は頂けますか?
- A
仏舎利塔独自の御朱印はありませんが、高尾山薬王院の寺務所で「飯綱大権現」などの御朱印をいただけます。
まとめ:次の高尾山登山で、特別な体験を
高尾山仏舎利塔は、ただの通過点ではありません。そこは、日本の若者の真摯な祈りとタイ国王の慈悲の心が生んだ、国際友好の感動的な物語が眠る聖地です。
この場所を訪れることで、あなたは以下の価値ある体験を得られるかもしれません。
- 歴史の証人になる: 日本とタイの70年以上にわたる友好の絆を肌で感じる。
- 心のデトックス: 様々な体験施設を通じて、日々の悩みやストレスを浄化する。
- 本物のパワーに触れる: お釈迦様の真身舎利が放つ、清らかで力強いエネルギーを受け取る。
- 高尾山の新たな魅力発見: いつもの登山を、より深く、意味のある精神的な旅へと昇華させる。

次に高尾山を訪れる際は、ぜひ少しだけ足を延ばして、この純白の塔に手を合わせてみてください。きっと、あなたの心に静かで温かい光が灯り、忘れられない思い出となるはずです。
仏舎利塔基本情報
- 名称: 高尾山仏舎利塔(たかおさんぶっしゃりとう)
- 所在地: 〒193-8686 東京都八王子市高尾町2177
- 電話: 042-661-1115 (高尾山薬王院)
- 公式サイト: 高尾山薬王院
- アクセス: 京王線 高尾山口駅よりケーブルカーまたはリフト利用、1号路経由で徒歩約20~30分。
※本記事の情報は2025年7月時点のものです。最新情報は公式サイトでご確認ください。