森と踊る株式会社 ~ 放置林の再生、そして、森と人間のダイナミックな協奏を目指す ~

村井沙織
村井

はじめまして。ライターの村井砂織です。
当サイト管理人 佐藤さんから情報をいただいた “森と踊る木こりフェス2021 春” 。 こちらに訪れたことがきっかけで、今回の記事を書かせていただくことになりました。


森と踊る木こりフェスとは、八王子市上恩方の陣馬街道から少し北に入った ”森” で開催された屋外イベントです。コロナ禍ではありましたが、屋外で密にならない環境下での開催でした。

森と踊る木こりフェス2021春

このときの様子は、フェスに参加されたフリージャーナリストのかたが、ご自身のWEBサイトで記事にまとめてくださっています。お時間があるときにぜひご覧ください。→ JiLAYS 森と踊る木こりフェス2021春

木こりフェスの主催者である「森と踊る株式会社」三木一弥さんは、7年前に1人でこの森に入り、間伐作業や土壌作りをすべて手作業で行ったのだそう。

特別な設備や技術がなくても、シャベルひとつで土壌を蘇らせることができるんです。森と対話するためには、道具は小さいほうがよいくらい。

三木さんのこの言葉には、とても驚かされました。私にも土壌を蘇らせることが出来るというのですから。

今回は、東京都あきるの市にある製材所にて、森と踊る株式会社のこれまでの歩みやこれから、そして、三木さんが考える”森”について、お話をうかがいました。

森と踊る株式会社 代表取締役 ”森とあそぶ木こり” 三木一弥さん

森と踊る株式会社 代表取締役 三木一弥

▽三木 一弥(みき かずや)さんプロフィール
1969年奈良県生まれ、兵庫県とインド育ち。子供の頃から、遊園地より動物園、屋内より屋外へと大自然に惹かれる。横浜国立大学大学院工学修了後、株式会社クボタに入社。浄水、下水などの水処理のエンジニアを経て、組織改革、新規事業立上げを経験。2013年末、突如、木こりになることを決意し、退職。
2016年2月、「美しい自然がどこまでも広がっている。そこで人々が笑顔で分かち合っている。モノやコトも分かち合っている。自然と人も分かち合っている」という100年後の未来を実現するために「森と踊る株式会社」を設立。あだ名は ”ずーやん”

日本の放置林の現状

日本には、人間が関与して放置された森がたくさんあります。

都会に住んでいる人にとっての森は、樹木が美しく輝いて「癒される」って印象ですよね。
だけど、実際に森に入ると全然違うんです。日射しは閉ざされ、空気はどんよりしている。
これには非常にショックを受けました。 杉や檜のように、高い位置で枝葉を伸ばす木々が密集して植えられると、日光が地面まで届かず、ほとんどの植物が生息できなくなってしまう。
まさに、”緑の砂漠” となるのです。

こちらは、森と踊る木こりフェス2021の ”ずーやんの森話” というガイドウォークで、参加者と森林を歩きながら三木さんがおっしゃっていた言葉です。東京方面から1時間以上かけて来た私は、まさに “外側から見た森” を期待していました。もちろん、森林破壊に関する多少の知識はありましたよ。

” 森と踊る木こりフェス2021春「ずーやんの森話」 ” でのずーやん

戦後の高度経済成長のとき、莫大な木材を得るために国策で植林された大量の杉や檜が、自然環境に悪影響を及ぼしていること。この植林が花粉症の一因だという話も、よく耳にするところです。
そして、大量植林を実施した後、円高が進み木材輸入が完全自由化になったことで、日本では輸入木材の流通が主流となりました。国産木材を扱っても薄利だからです。こうして、多くの人工林が国内で放置されることとなりました。

日本の国土は約7割が森林で、その約4割を占める人工林が、いまなお、放置されています。
三木さんは、間伐は森の再生にとって必要なことだとおっしゃいます。ただ、森にとって必要でありながら、ビジネスとしては成り立たちにくいのが間伐事業です。

そんななか「森を豊かに戻して、自然と都会の生活を繋ぐ活動がしたい。」そんな思いから、2016年に森と踊る株式会社を有志で設立。間伐体験会や自然回帰という価値観を持つ仲間たちでイベントを開催するなど、新しい可能性を模索なさっています。

大企業を辞めて木こりに

森で1本の木を切ったとき、これまでにない生命のリアリティを感じた。

サラリーマン時代、友人に誘われて富士山麓へ行き、初めて手ノコで一本の木を伐採したんです。そのときの、幹を断ち挽く感触だとか、樹木が倒れるときの軋みかたや振動が今でも忘れられません。広大な森でたった1本の木を切っただけで、暗闇に光が射し、爽やかな風が通り、樹木の葉が心地よい音をたてて揺れ始めました。そのとき、僕の心にも光が射して、風が通る心地よさを感じたのです。まさに、生命のリアリティを体感した瞬間でした。もう、会社でコピー機を回している場合ではないような気持ちになりましたよ 。

村井沙織
村井

三木さんは、はじめて木を切ったときの心境をこう語ります。理工系の大学を出られて20年、浄水場プラントの設計など、水処理に関わってきた三木さん。多忙ながらも、やり甲斐のある職場で、最年少で課長職に就くなどのトロフィーも得たとうかがいましたが。

三木さん:いい職場だったと思います。ただ、長年、水処理に関わることで、汚れた水を浄化することより ”どうしたら水を汚さずに済むのか?” ここを考えるようになりました。医療でいう対処療法ではなく、根本治療を目指したくなったんですね。

ーーそこで、すべての源泉である”森”に関心が向かったということですね?

話に前のめりになる三木一弥さん

三木さん:そうです。311の震災以降、都市型システムは脆弱だと気づいたはずなのに、僕はさらに発展途上国への事業拡大を企てている … 。サラリーマン時代は、社長に直訴をして島流し … なんていう、やんちゃもしましたが、安全な傘下で好きなことをしようとしている自分の小ささにも嫌気がさしました。自分に正直に生きたい、というのが、脱サラの一番の動機かもしれません。

ーー自分に正直になる。不安や恐怖感はなかったんでしょうか?

三木さん:もちろん 会社に戻りたいくらいでしたよ(笑)。「俺は木こりになる!」と意気込んで林業の就業支援講座に通ううちに、自分には知識も、経験も、もちろんお客さんも、道具すらないことに気づくんです。だけど、今更もとの生活には戻れない … 。なら、木こりになるには何よりもまず、山がなくちゃ! ということで、友人知人100人以上に「山を持つ知り合いはいないか?」と声をかけて廻りました。そして、ようやく、ご縁のあるかたと出会うことができたのです。

企業理念や活動について

放置林の再生。そして、林業従事者、建築業者、職人だけでなく、ふつうの人々が森と関わるきっかけを作りたい。

ずーやんの森話のときの三木さん
森と踊る株式会社 代表取締役 三木一弥
三木さん

こうして、山に入ったものの、僕は林業がやりたいわけではなかった。ただ、人間が一度関与して放ったらかしにした森を、豊かに戻したかったんです。

まずは、手つかずの山にスコップ1本で道を作ることから始めた三木さん。
そして、枯れた土壌に水と空気の流れが蘇るように空洞を作ったり、微生物が増えるように藁や炭を植物の根の間や窪みに埋め込む作業を淡々と続けました。

密集して植林された杉、檜から、間伐する木々を選んで、まずは、幹の表皮を剥く。そのことで葉が落ちて、地面に太陽の光が差し込む。すると、太陽を待っていた種子が発芽し、わずか1年で20種類以上の植物が増えたというお話が印象的でした。

三木さん:植物が増えると微生物や昆虫が増え、さらに、それを食べる鳥や小動物も増えてゆく … 。
杉、檜だけの森が多様な森に変化していくんです。

ーーそれにしても、今では地元の方々の散策路になっているこの山道を、手作業で作ったとは驚きです。小道の脇は90度の斜面となっています。この土の壁、コンクリート舗装しないほうが安全だというお話は、とても衝撃的でした。

三木さん:そう。土壁は剥き出しのほうが安全で健全なんです。大地には水と空気の流れが必要ですから。そこをコンクリートで塞いでしまうと、大自然は必死に水と空気が通る天然のパイプを作ろうとします。数年前の台風の時、この近くでも土砂崩れがありましたが、これは、森が自らを回復させている活動にほかならないのです。

ーーこれを、自然災害と呼ぶか、人災と呼ぶのか…。私たちが自然災害と呼ぶものを最小限にするためにも、正しい知識を持って生活したいものです。森と踊る木こりフェスでは、わかりやすく、実体験とともに、森についての知識や知恵をご紹介くださっていますね。

村井沙織
村井

土壌に天然のパイプができて、水と空気が自由に行き来できるようになると、菌糸レベルで共存している植物や苔や生えて、土壁がさらに頑丈になる。このお話を聞くまで、コンクリート舗装のほうが安全だと感じていました。

三木さん:老若男女問わず、イベントに来てくれた方々から「素人ですが、森のために何かをしたい」「森に何かを返したい」と言っていただけるようになりました。 そういう想いはあれど、設備や技量がなく手をこまねいているみなさまを「自分を森と分かち合う、森からも分かち合われる。」そんな協奏に巻き込んでゆきたいですね。

三木さん:人が大地に出来ることを知ってしまうと、ちょっとした出先でも、シャベル持ってたらやってあげたいのになという場面に出会うようになります。僕がそうでしたからね。旅道具にスコップが入ってる、そんな人が増えたら嬉しいなという願いで “森と踊る木こりフェス” を開催しています。

森と踊る株式会社 取締役 村上右次さん
ポーズを取っているのは、森と踊る株式会社取締役 村上右次さん。
森と踊る株式会社
大地の恵みのドラッグストア ココペリ
自分だけのツボを見つけるお灸教室
自分だけのツボを見つけるお灸教室
パン工房ふらんす

ーー森林再生を目指して間伐された木材は、同じ意識を持つ店舗や社屋の建築やリフォーム、また、家具やおもちゃ、文房具、カトラリーなどの生活雑貨の製作に使用されています。これは「生きた森を街に連れてくる」という、森と踊る株式会社ならではの視点です。

村井沙織
村井

初めは単独作業でしたが、そんな三木さんの背中を見て、同志や仲間も増えてきたそうです。
手つかずの森について、製材について、最初は何もわからなかったとおっしゃる藤嶋裕太さんも、今では心強い存在です。

森と踊る株式会社 藤崎裕太さん
製材所で作業する藤嶋裕太さん

三木さん:僕たち自身が実践者の集団であろうと努めているんです。もちろん、知識も大切ですが、何より自分の経験と体感、インスピレーションを信じてゆきたい。

ーー三木さんに森のお話をうかがっていると「わからないけど、そう感じる。」とか「1年先は違うことに気づくかもしれないけど。」だとか。あやふやな言い回しが出てくるのですが、むしろ、そのほうが、信頼感というか、きちんとお話をうかがおうという気持ちになります(笑)

三木さん:僕にとっては、「わからない」って1番の動機だし希望です。僕らはコンサルタントやシンクタンクでもない。むしろ、そういった職業のかたのモルモットとなって、森の可能性に挑んでゆきたいくらいです。そして、大自然に関しては、本当に、そう簡単にわかるものではないですからね。

村井沙織
村井

「わからない」という言葉を、とても楽しそうに発音なさる三木さん。
確かに、博士よりモルモットのほうが、苦労が多いぶん たくさんの真実を身に沁みて解っていそうです。それでは、三木さんが、この7年間、森で過ごして肌で感じたこと、学んだこと、益々わからなくなったこと(笑)などを、もう少し深めに、おうかがいしたいと思います。

森と人間のこれから

生命同士のコミュニケーション。そもそも、生命とは? それが僕らが一番興味があることなのです。

森で働いていると理屈抜きで植物と会話してしまうことがある。どの木を間引くか、どこの土に空気を送るか、相談しているのです。そんなとき、森には言葉で表現し得ないものの存在が関与していると感じます。そこを認めるとさまざまな事象が府に落ちます。生命同士のコミュニケーションにいかなる方法があるか? そもそも、生命とは一体なんなのか? 私たち人間も含めた生命同士の協奏について、調査研究開発したいというのが、うちの会社の核心であり、今の僕が一番興味のあることなんです。

ーー都市化が進み、人間が森に畑を作るようになって50年ほど経ちました。害獣から作物を守るために、電気柵が設置された畑をよく見かけます。

三木さん:森で作業をしていると、野鳥や猪や鹿、いわゆる害獣は不自然なものを自然に戻す一役を担っていると感じます。飢えを満たすだけでなく、除草剤や農薬などで不健全になったフィールドを治しにきている。僕たちも、汚れた部屋を片付けますよね? それと同じです。その感覚に我々も敏感になれれば、動物との共生関係も出来るんじゃないかと思います。

ーーロシアで100万部、全世界で1100万部を突破した世界的ベストセラー 『アナスタシア (響きわたるシベリア杉 シリーズ1) 』を、ご自身のバイブルであると、ご紹介なさっていますね。

三木さん:観念を超えたところの事象に共感しています。日本にもさまざまな寓話がありますよね。昔は人間も日常的に動物とコミュニケーションしていたのでは?と感じます。うちの畑には「食べてもいいけど、僕らの分も残しておいてね。」って、動物たちへ貼紙をしているんです。コミュニケーションとはエネルギーの交換だから、真摯に向き合えば、伝わるんじゃいかという実験です。

ーー動物たちに貼紙をするなんて、素敵です。そんな生活に憧れます。これは、数年前まで科学者だった三木さんの新境地でしょうか。それとも、三木さん本来のお姿でしょうか?

三木さん:うーん。本来の僕ですね。森には物理的な自然環境に対しても、人間の精神に於いても、滞りをデトックスする力があるんです。森に入ると長年の思い込みや教育の枠が外れて、本来の自分に戻れる感覚があります。僕の言ってることはエキセントリックだし、科学的な土俵では理解しにくいけど、50年後には科学的に証明されるかもしれない。現代人は「森とは?」「科学とは?」を再定義するべきだと感じています。

ーー私は都内在住ですが、コロナ禍に入ってから、自然豊かな場所にいる時間が増えました。そのことで、野鳥や動物、植物の存在が自分にとって一段、濃くなったのを感じます。私の周りでも、田舎暮らしを考えたり、畑を借りたり、職業を超えて、そういう人々が増えています。

三木さん:F分の1の揺らぎだとか、森林療法だとか、自然がもたらす恩恵は既にたくさんあります。でも、美しいところで気持ちいいって感じることって、自然環境が起こしてくれること。それって受け身で静的なことだと思うんです。そのさらなる次の段階として、人間は自ら自然と関わる必然性を感じ始めているんだと思います。恩恵をもらうだけでなく、与え合う。もっと動的に、ダイナミックにね。

ーーあっ、つまり、それこそが「森と踊る」ってことでしょうか(笑)

三木さん:そう! 森と踊るです(笑) この社名は見えない存在から授かったギブンネームなんです。森とともにダンスすることで、双方がハッピーになれる。見ていても美しい。楽しい。実際に森に入って、土や植物に触れる。与え合う。協奏することの素晴らしさを、ぜひ知って欲しいです。

ーー三木さんのお名前も三本の木で、”森” だとおっしゃっていましたね。

三木さん:そうなんです。自分の名前にお役目が刻まれていました。起業前の呼ばれている感覚は僕にとっての真実でした。

ーー人知を超えたルーツを感じますね。始めっから森さんでないところが、素晴らしく粋です(笑)

三木さん:やっとお前も自分の道に気づいたのか!と、叱咤激励されている気分です。なにしろ森は寛大です。木を切って「俺を切るな!」と怒られたことがありません。むしろ自然は、どの木を切るべきか教えてくれる。そう考えると、森の樹々も僕たちも、何か大きな命の1部のような “ワンネス” という共通性があるように感じてなりません。

取材の最後に

緑の砂漠と呼ばれる暗い森も、1本の木を間伐することで、光が射し込み、風が通り、水脈が生まれ、生命活動が蘇ります。そのことで、私たち人間は生命維持だけでない、心の豊さ、本来の自分に立ち返るトランスフォーメーションを遂げる直観を得ることができます。

植物にそのような不思議な力があることを、私自身、このコロナ禍でうっすら感じ始めていましたので、今回、お話をうかがえてとても嬉しかった。ぜひ、この感覚を共有したいと思いました。

自然環境問題、森林問題と訴えられるこれらの問題の鍵は、やはり人間の心にあるようです。
そろそろ自分と森との繋がりを正々堂々と認めて、バックにシャベルを忍ばせて、自然=自己メンテを行う。
そんな知恵を身につけたいと思いました。

村井沙織
村井

またまた、高尾の麓に素敵なフモト民、見つけました。森と踊る株式会社 三木さん。
これからも森について、生命について、たくさんのお話しをお聞かせください。

森と踊る株式会社 基本情報

住所:東京都八王子市上恩方町4643
HP:http://www.moritoodoru.co.jp/
Facebook:https://m.facebook.com/moritoodoru/

インタビュー中、先代さんが持ってきてくださった ”ずっと昔の製材所” の写真です

Photo by 渡邉美穂子( mommy 主宰

 

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