株式会社健組 伝統木構造の小屋作り「小屋の学び舎」を見学してきました

2020年11月8日(日曜日)、「株式会社健組(八王子市上恩方533-1)」の敷地内で開催された小屋作りワークショップ「小屋の学び舎」にお邪魔して来ました。
健組は八王子市の恩方にある、森林管理から製材・住宅建築迄手掛けている建設会社です。

今回、ワークショップの最終日にお伺いして、「小屋の学び舎」の取り組みについてレポートしたいと思います。

小屋作りワークショップ「小屋の学び舎」とは

小屋作りワークショップは、伝統工法の技術を継承する健組の棟梁・小野田健さん他3名の講師陣による技術指導を受けながら、参加者全員で「伝統木構造」の小屋作りをするというものです。

株式会社健組 棟梁・小野田健さん

「伝統木構造」とは、無垢のヒノキ・杉などの木材を使い、金物や接着剤を使わず木を刻み・組んで建てる日本の伝統を受け継いだ建築技法のこと。道具の扱い方や刃の磨ぎ方の基本から学ぶことができます。

と、健組棟梁の小野田健さん。

小屋作りワークショップは週末の2日間を5回、全10日間のコースで開催。
今日は最終日で、いよいよ小屋を完成させる日となります。
小屋が完成したあとは解体して、小田原の「はじめ塾」へ寄付することになっています。

今回の講師陣は以下の4名です。

  • 小野田 健さん(健組・棟梁)
  • 岩越 松男さん(NPO法人 新月の木国際協会 副理事長 水土社代表)
  • 梅澤 典雄さん(梅澤典雄建築設計事務所)
  • 馬場 寛明さん(TANBO NO WA)

企画運営「TANBO NO WA」馬場寛明さん

ワークショップを企画運営されている案内役の馬場寛明さん(TANBO NO WA)にお話を伺いました。

TANBO NO WA 馬場寛明さん

TANBO NO WAの馬場さんは去年、日野市で稲作の新規就農をされました。
就農前は自然食の会社に勤務。その時に健組棟梁の小野田さんとともに、衣食住に渡ってより自然なライフスタイルを実現するというテーマでの企画を行う機会があったとのこと。
そのご縁がこのワークショップに繋がったそうです。

「現代の生活スタイルは、衣食住全てに渡って、川上から川下まで、かけ離れてしまっていると感じています。
そこで、この講座では住について、昔からの木組みを実際に鑿(のみ)と玄翁(げんのう:石を砕く大型のかなづち)で刻む体験をすることにより、木材についても理解が深まれば色々なものが繋がって、本当の意味で豊かになれると思うのです。
小屋を作るという同じベクトルを持った、様々な人達が集まってくれています。
食に関して同じ課題を感じている人や、田んぼをやっている人も居ます。
様々な人みんなで一緒にやって行くということで、良いムーブメントに成り得るのではと思っています。」

と語ってくださいました。

馬場さんは一見穏やかで控えめな感じの男性ですが、これまでの仕事の中で、真剣に人間の暮らし方と向き合ってこられた方ならこその、熱い想いがビシビシ伝わってきます。
安さや便利さにばかり目が行っている今の暮らし方を考え直さなくては、と反省しきりでした。

参加者の皆さんで作った小屋は、子ども活動や、社会的な活動をしている事業者へ無料で寄付します。
第1回(2018年度)は、日野市プレイパーク「どろんこの国」という子供の遊び場へ寄贈されました。

今回、第2回(2020年度)は、神奈川県小田原市の「寄宿生活塾 はじめ塾」へ寄贈します。
はじめ塾は3代続いている寄宿塾。
学校へ行きたくないという子供も泊まっていて、農業をベースに、生きることを学ぶ塾だそうです。

寄贈された小屋で子供達がどんな体験を重ねていくのか、想像するとワクワクしますね。
今回は女性の参加者が半数を超えて、千葉からも建築科の大学生が参加しています。
70代から大学生まで、多世代が集まって一つのことにチャレンジする。
とても貴重な機会だと思います。

馬場さんは、「昔は、結の作業ともいえる機会が普通に町の中にあったと思うのですが、それが今は無くなっているので、一緒に何かをやるということがとても大事だと思うのです。」 とおっしゃっていました。

ワークショップ参加者の感想

ワークショップに参加されていた方に感想をお聞きしました。

▼吉宮さん(大学3年生)

吉沢さん(千葉県から通って来ている大学3年生)

「講師の岩越さんとは以前から田んぼの活動で繋がりがあったのですが、自分が建築学科に入ったということで、このワークショップのことを教えて頂いて参加を決めました。
本で理解している事とは全然違って、やってみるとこんなにも難しいのかと。
それが衝撃で刺激になりました。
こういう経験は絶対に将来に活かせると思います。
このワークショップは、現場第一線の方と素人が接することができる貴重な機会だと思います。
それに一人で全部やろうと思うと時間がかかるので、チャレンジしたくても決心ができません。
でも、みんなで分担することで、短期間でこれだけのものを作る体験ができるところが凄いと思います。」

▼これが、みんなで組み立てる小屋の模型です。

受講者で班を作って、それぞれの班のみんなで協力して1本づつ柱等の刻みを担当。
間違わないように、この模型を見ながら作業をしていきます。

これまでの4回(延べ8日間)の講座で、ノミとノコギリを使って刻み加工をしてきました。
今日、実際に組み立て始めたのですが、寸法の間違いが無いか等、皆さんちょっと緊張している様子も伺えました。
寸法が合わない所が見つかっととしても、修正を行いながら組み立てることも大事な技のようです。

「いの一番」から組み立て、小屋を建てて行きます。
大工さんには共通用語がたくさんあって, 違う現場に応援に行っても直ぐに仕事を始めれるのだそうです。
柱を立てる場所に番地を、”いろはにほへと” と数字の組み合わせで付けてあって、そのスタートが「いの一番」となっているのです。

今日も、組み立て始めて、寸法が合わないという所が見つかりました。

土日に宿泊してワークショップに参加するので、毎回食事チームが同行されています。
2日間、ひたすら地道な作業が続く中で、皆で美味しい食事を楽しむ時間は格別のようです。
ちょっとしたキャンプ気分も味わえそうですね。

▼第1回受講生 中島さん (小田原の手焼き煎餅屋さん雷神堂 の店主さん) OBとして毎回、八王子までサポートに来られています。

店舗紹介 詳細 | 巣鴨本店をはじめ、東京、神奈川中心に関東に多店舗 [手焼きせんべい雷神堂] (e-fujiichi.co.jp)

▼第1回受講生 八巻さん


第1回(2018年度)の講座を受講された八巻さんも、今回参加されていました。
八巻さんは茨木県筑西市の工務店の社長さん。(株式会社やまき工務店http://www.yamaki-ie.com/)
OBとして毎回、八王子までサポートに来られています。
他にもOBの方々が講座のサポートに来られていて、多くの人に支えられている開催されている様子が伺えました。

仮組が無事に完了です。皆さん、達成感で、とっても素敵な笑顔ですね!

取材の最後に

今回の取材の中でOBの方の言葉が印象的でした。

「『今度家を建てるんだよ』とか普通に言っているけど、現代は『家を買うよ』というのが正しいのでしょうね。
この講座に参加して体験してみて分かりました。
ひと昔前はこんな風に、ご近所のみんなで協力して家を建てたのでしょうね。
これがホントの、家を建てるってことなんだなあと。」

仮組後は解体して、希望する寄付先の団体へ運んで建前をします。
第1回(2018年度)の講座で組み上げた小屋は、日野市の「落合交流センター」で見ることができます。

第2回目の今回は、小田原にある「はじめ塾」に寄付することが決まっていて、12/5(土)、12/6(日)の最後の講座で、建前と上棟式を行います。

寄付先での設置後は、伝統木構造未来について参加者全員で意見交換をして、楽しく打ち上げも行うとのことです。

隔年開催なので次回は2022年の予定だそうです。
ご興味のある方はお気軽にお問合せしてみてください。

「小屋の学び舎」 お問い合わせ先

■TANBO NO WA 馬場寛明
TEL:080-5049-5819
Mail:hittuki3000@nifty.com

■株式会社 健組
Fax:042-633-0208

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