年間300万人が訪れる東京の人気観光地・高尾山。その玄関口となる京王線高尾山口駅前に、2024年4月5日、新たな憩いの場「高尾山ふもと公園」がオープンしました。この公園は、駅前を流れる案内川の河川工事を都が行った際に整備された階段護岸を生かし、登山客や地元住民が気軽に水辺に触れられる空間として整備されたものです。
これまで高尾山口駅前は、生い茂る樹木や林立する看板で案内川への視界が遮られ、日中でも薄暗いイメージがありました。また、観光客と地元住民の動線が交差するため、度々大混雑が生じていました。高尾山ふもと公園の誕生により、駅前エリアは明るく開放的な水辺空間へと変貌し、混雑緩和にも貢献しています。
基本情報
所在地 | 東京都八王子市高尾町2228-2 |
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アクセス | 京王線高尾山口駅から徒歩1分 |
面積 | 約1,154平方メートル |
開園日 | 2024年4月5日 |
管理 | 八王子市(階段護岸部分は東京都) |
駐車場 | 公園専用の駐車場はありません。近くの有料駐車場をご利用ください。 |
公園の整備背景とコンセプト
高尾山ふもと公園は、単なる公園整備ではなく、八王子市と東京都の連携プロジェクトとして位置づけられています。駅前の広場整備を進めていた八王子市と、案内川の河川防災工事を進めていた東京都が協力して整備を行いました。
2008年には豪雨による土砂の堆積や既存橋脚による河積阻害の影響で駅前が浸水し、老朽化した護岸の一部が損壊するといった被害を受けていました。また、駅周辺では官民それぞれの施設開発が進んでおり、老朽化した護岸は周辺の景観との不調和が目立っていたため、景観に配慮した河川整備が必要とされていました。
整備に向けては、2018年から地域住民・地元事業者との議論を重ね、「高尾山口駅周辺地区都市計画方針」(平成28年度)、「高尾山口駅及び参道周辺整備計画」(令和元年度)を定めました。さらに令和3年度には公募市民、学識経験者、東京都南多摩西部建設事務所を加え「高尾山口駅前ふもと公共空間形成・活用ワークショップ」を開催し、「(仮称)案内川左岸広場整備方針修正」を定めました。
公園の名称についても、ワークショップで提案された案をもとに地元の意見を踏まえ、「高尾山ふもと公園」と決定されました。このように、地域と連携した丁寧な計画策定プロセスを経て、公園は整備されました。
公園の主要な見どころと設備
案内川の階段護岸と水辺空間
公園の最大の魅力は、案内川に設けられた階段護岸です。この階段護岸は東京都が整備したもので、川に降りて水に触れることができます。水深が浅く安全に川遊びができるよう設計されており、小さな子どもでも安心して遊べます。

階段は座って川を眺めたい人と、川に降りたい人がお互い邪魔にならずに移動できるように、段の高さが2種類あるなど工夫されています。夏には、階段に腰かけて水に足を漬ける登山帰りの人や、日傘を差して川を眺めるカップル、網を手に魚を追いかける子どもなど、様々な人が自由に川を楽しむ姿が見られます。
案内看板と情報提供
公園内には、高尾山へ向かう人のために登山ルートを紹介する案内看板が設置されています。高尾山には1号路から6号路まで複数の登山コースがあり、それぞれの特徴や難易度、所要時間などが分かりやすく紹介されています。また、周辺地域の案内や日本遺産について紹介する看板もあり、高尾山を訪れる観光客にとって有益な情報が提供されています。

ユニークなベンチと休憩スペース
公園内には随所に木製のベンチが設置されており、登山の前後に休憩できます。これらのベンチは、公園が整備される前に植えられていたケヤキなど、伐採した木を活用して作られています。

ベンチには公園計画のために伐採した木を利用しているため、完全に同じ形のベンチはなく、座面の高さも低いものから高いものまで様々です。子どもたちも触ったり座ったりして楽しめるよう工夫されています。
登山客のための靴洗い場
登山客に嬉しい設備として、靴洗い場が2基設置されています。ブラシやバケツも用意されており、登山で汚れた靴を洗えます。高尾山口駅にも靴洗い場がありましたが、数が少なくて混み合うこともあったため、新たに設置された靴洗い場は登山客から好評を得ています。

高尾山ゆかりの樹木
高尾の自然環境を学ぶ環境学習の場としても活用していくため、ツクバネガシやメグスリノキなどの高尾山ゆかりの樹木も植栽されています。これらの樹木は、高尾山の自然を身近に感じられる要素となっています。
季節別・利用者別の楽しみ方
夏季:水遊びスポットとしての活用法
夏季は、案内川での水遊びが最大の魅力です。川の水は透き通っていて冷たく、暑い夏の日には最高の癒しとなります。水深が浅いので、小さな子どもでも安全に遊べます。

水遊びをする際の注意点としては、川底は石なので履き物が必須であること、更衣室がないことなどが挙げられます。また、雨の日や雨の日のあとは増水する可能性があるため注意が必要です。
登山前後:休憩スポットとしての利用方法
登山前には、公園内の案内看板で登山ルートを確認したり、ベンチで休憩できます。登山後には、靴洗い場で靴を洗ったり、階段護岸に座って疲れた足を川の冷たい水につけたりすることで、疲労回復を図れます。
また、高尾山口駅周辺には多くの飲食店があり、テイクアウトして公園で食べられます。高尾山ふもとやのジェラート、TAKAO COFFEEのコーヒー、千代乃家の和菓子など、様々な飲食物を楽しめます。
家族連れ:子どもが安全に水に親しめる工夫
公園は、子どもが安全に水に親しめるよう工夫されています。階段の下は浅くなっているスペースがあり、小さな子どもも遊びやすくなっています。川の水が透き通っているので、小さな魚や石が見え、子どもたちにとってはワクワクする体験となります。
また、公園内はスロープが整備されているので、ベビーカーでも安心して利用できます。

写真愛好家:フォトジェニックなスポットとベストアングル
公園内には、フォトジェニックなスポットがいくつもあります。透き通った川の流れ、階段護岸に座る人々の様子、木製のベンチなど、様々な被写体があります。特に、紅葉の時期には公園内の樹木が色づき、美しい景色を撮影できます。
また、京王線の電車が見える位置にあるため、電車好きな人にとっても魅力的な撮影スポットとなっています。
地元住民:日常的な憩いの場としての使い方
公園は、地元住民の日常的な憩いの場としても利用されています。川の流れる音を聞きながら、ベンチに座ってのんびりと過ごせます。また、平日の夕方は人が少ないため、ゆっくりとロケーションを楽しみたい方にはおすすめの時間帯です。
利用者の声(各種サイトや知人から集めた感想)
公園を訪れた人々から、様々な感想が寄せられています。「うっそうとしていた駅前が明るくなった」「駅前が開けた印象になった」といった声があり、公園整備による駅前エリアの印象的な変化を実感する人が多いようです。
水辺で遊ぶ子どもたちの様子も見られます。「川の中で石を集めたり、小魚を探したりと、夢中で遊んでいた」「水の冷たさが心地よく、何度も『気持ちいいね!』と嬉しそうに言ってくれた」といった体験談もあります。
登山帰りに足を水に浸す人々の姿も多く見られます。「登山後に汚れた靴を洗える靴洗い場にはブラシもあり、とても便利」「階段に座ってのんびり川を眺められるのが良い」といった感想が寄せられています。
周辺情報と組み合わせプラン
高尾山登山と組み合わせたモデルコース
高尾山ふもと公園を起点とした高尾山登山のモデルコースをご紹介します。
午前コース(約4時間):
- 高尾山ふもと公園で登山ルートを確認(9:00)
- ケーブルカーで高尾山駅へ(9:30)
- かすみ台展望台で景色を楽しむ(10:00)
- 1号路を通って山頂へ(11:00)
- 山頂でランチ(12:00)
- ケーブルカーで清滝駅へ下山(13:00)

自然満喫コース(約5時間):
- 高尾山ふもと公園で登山準備(8:30)
- 6号路から登山開始(9:00)
- 琵琶滝で休憩(10:00)
- 山頂到着・ランチ(11:30)
- 4号路で下山(13:00)
- 高尾山ふもと公園で足を冷やして休憩(14:00)

高尾山口駅周辺のテイクアウトフード情報
高尾山口駅周辺には、テイクアウトできる飲食店が多数あります。公園でのピクニックや、登山の途中で楽しむのにぴったりです。
- 高尾山ふもとや: ジェラートが人気。イタリアンビュッフェもあり
- TAKAO COFFEE: 美味しいケーキとコーヒーが楽しめる。コーヒー豆のお持ち帰りも可能
- 千代乃家: 和菓子店。酒まんじゅうが人気
- つぼ萬: 日本料理店。テイクアウトメニューあり
- TMH.(TAKAO MOUNTAIN HOUSE): 山に合うオリジナルブレンド豆のハンドドリップコーヒーやクラフトビールを提供するテイクアウトスタンド
- 高尾すみれ庵: お稲荷さんのテイクアウトが可能

タカオネなど周辺施設との連携
高尾山口駅前には、2021年にオープンした複合施設「タカオネ」があります。ホテルやカフェ&ダイニング、高尾山のオリジナルグッズが購入できるお土産ショップなどがあり、「山に登るだけじゃない」さまざまなアクティビティプログラムの活動拠点となっています。

タカオネでは、現地の職人やガイドたちによる、革を使ったクラフト体験や陶芸体験のワークショップ、日の出ハイキング、オーダーメイドツアー、ネイチャーツアーなどを体験できます。
また、高尾山口駅から徒歩4分の場所には「高尾599ミュージアム」があり、芝生広場で遊んだり、館内の「PLAY MOUNTAIN」という山モチーフの遊び場で遊んだりすることができます。
季節ごとのおすすめ訪問プラン
春(3月~5月): 桜の季節に高尾山を訪れるのがおすすめです。高尾山ふもと公園で桜を眺めながら、テイクアウトのコーヒーを楽しむのも良いでしょう。

夏(6月~8月): 暑い夏は、高尾山ふもと公園での水遊びがおすすめです。川の冷たい水で涼みながら、夏の一日を過ごしましょう。
秋(9月~11月): 紅葉の季節には、高尾山の美しい景色を楽しめます。例年の見頃は11月中旬~12月上旬です。高尾山もみじまつりも開催されます。
冬(12月~2月): 冬の高尾山は比較的空いているため、ゆっくりと登山を楽しめます。寒い日には、タカオネでホットドリンクを楽しむのもおすすめです。
環境学習と地域活動の場として
高尾山ふもと公園は、高尾の自然環境を学ぶ環境学習の場としても活用されています。ツクバネガシやメグスリノキなどの高尾山ゆかりの樹木が植栽されており、自然に触れながら学べます。
2025年2月23日には、「高尾山ふもと公園の育て方をみんなで考える」というトークイベントが開催されました。このイベントでは、公園の検討経緯やコンセプト等が紹介され、他地域の市民が参加して魅力を高めている公園の事例も紹介されながら、高尾山ふもと公園の今後の利活用や育み方について議論されました。
開園後は地域と連携して、ワークショップなどにも活用していく考えです。初宿和夫市長は「八王子の自然の魅力である山と川の両方が楽しめる場所が新たに加わった。高尾を訪れる多くの人がここで八王子ならではの自然環境の魅力に触れ、その賑わいを市全体へ広げていければ」と期待を寄せています。
訪問時の注意事項やまとめ

混雑を避けるおすすめの時間帯
高尾山は行楽シーズンの土日・祝日はとても混雑します。特に紅葉シーズンの秋は多くの観光客や登山者が訪れ、平日でも混雑しやすくなります。
混雑を避けるなら、早朝(7:00~9:00)がおすすめです。この時間帯は空気が澄んでいて快適で、週末や祝日でもこの時間に訪れれば、比較的スムーズに登山を始められます。
昼前後(9:00~13:00)は最も混雑する時間帯です。登山道は観光客で賑わい、ケーブルカーやリフトの待ち時間が長くなることもあります。
平日の夕方は人が少ないため、ロケーションを楽しみたい方は夕方の高尾山口をおすすめします。
持っていくと便利なもの
高尾山ふもと公園で水遊びをする場合は、以下のものを持っていくと便利です。
- 水陸両用靴やサンダル(川底は石なので履き物が必須)
- タオル(水遊び後に拭くため)
- 着替え(水遊び後に着替えるため。更衣室はないので注意)
- 日傘や帽子(日差しが強い日の対策に)
- 飲み物(水分補給用)
マナーと注意事項
高尾山ふもと公園を利用する際は、以下のマナーと注意事項を守りましょう。
- ゴミは持ち帰りましょう
- 川で遊ぶ際は、他の利用者の迷惑にならないよう配慮しましょう
- 雨の日や雨の日のあとは増水する可能性があるため、川遊びは控えましょう
- 公園内は禁煙です(喫煙スペースはありません)
高尾山観光における新たな魅力としてのポジショニング
高尾山ふもと公園は、高尾山観光における新たな魅力として位置づけられています。これまでの高尾山観光は、登山や薬王院参拝が中心でしたが、高尾山ふもと公園の誕生により、水辺で遊ぶという新たな楽しみ方が加わりました。
特に、小さな子どもがいる家族連れにとっては、登山が難しい場合でも、高尾山の自然を身近に感じることができる貴重なスポットとなっています。また、登山後の疲れを癒す場所としても、多くの登山客に利用されています。
まとめ
「高尾山ふもと公園」は、駅近でありながら自然を存分に楽しめる新しいスポットです。川遊びや登山の休憩、紅葉の鑑賞など、さまざまな楽しみ方ができるこの公園は、家族連れや登山客にとって理想的な場所と言えるでしょう。次回、高尾山を訪れる際には、ぜひ「高尾山ふもと公園」に立ち寄り、自然と触れ合うひとときをお楽しみください。
参考動画:TOKYO MX NEWS のYouTubeチャンネルより