美味しく、楽しく、ゆったりと。
ー Udon Cafe 鈴屋ではじまる、のんびり豊かな日々 ー
目次
║はじめまして
>フモト民の皆様、高尾フモト同盟をご覧の皆様
はじめまして。今年5月から高尾山の麓に住んでおります、うちやまと申します。
コロナになって、日々の暮らしを見つめ直すことの大切さを実感し、
心地のいい空気が流れるこの高尾に、ご縁あって引っ越してきました。
紹介してもらった高尾の家を内見しに来た日、「アートギャラリー春しるべ」の前で、
オーナーの谷本夫妻と出会い、その後も高尾で何度も遭遇。
ある日、Udon Cafe 鈴屋で一緒にご飯を食べることになり、
「高尾フモト同盟の市民ライターの活動を一緒にしませんか?」とお誘いいただき、今に至ります。
自分自身は読書で思索に耽ることが好きで、「暮らし」をキーワードに探究しているこの頃。
しかし、抽象的な思考をめぐらすだけでなく、具体的な実態のイメージをもって、
豊かな暮らしのあり方を発見していきたいと思っていたところでした。
そこで、フモト同盟のこの場をとおして、
高尾でお店や活動を営む人たちの見つめる「暮らし」の風景を伺い、
〈フモト暮らしの探索記〉として、記録を残していきたいと思います。
║Udon Cafe 鈴屋
私自身が最初にインタビューさせていただくのは、「Udon Cafe 鈴屋」を営むご家族。
ご近所にあり、毎週のように通っています。
鈴屋のある場所は、甲州街道沿いに建つマンションの1階。 高尾駅と高尾山口駅の間にあります。
今年の2022年、6月にオープンしました。
看板メニューは、出汁のきいた、美味しい「おうどん」。
朝のモーニングから、ランチ、カフェ、夜ご飯まで、
おうどん以外にも美味しい料理・お茶菓子・お酒がいただけます。
お店を営む鈴屋ファミリーは6人いるのですが、今回お話を伺ったのは、そのうちの御三方。
店主を務める良さん、そのお母さんの恵さん。そして、妹さんからもお話を聴きました。
それでは、鈴屋のはじまりのストーリーをお楽しみください。
║のんびり過ごす場所を、自分たちの手で。
ー どんなきっかけや想いがあって、この場所で、このお店が始まったのでしょうか。
恵さん:もともと、息子(良さん)も私も、バリバリで働いてた。
でも、私は足を怪我してしまって。
五反田にレストランがあって私は働いていたんだけど、突然怪我をして、3、4ヶ月入院をしたの。
恵さん:私、昔から高尾に住みたいと思っていて、 退院した後に、主人と高尾山登って。松葉杖で。笑
その時、今のお家(@紅葉台)を見つけて気に入っちゃったの。
最初は高尾山口の方を探していたんだけど、もう売れていて物件はなくて。
でも紅葉台の方も静かで自然がいっぱいで。
静かなところで暮らしたかったの。 ずーっと都会だったから。人間関係にも疲れ。笑
でも息子(良さん)は、ずーっと銀座で仕事をしていて。
で、美佳さんと結婚して、そしたら「人間らしい仕事をしたい」って。
企業にいると、いつ帰って来るのかわかんない状態。
それならやっぱり、自分の店を持ちたいなって。
本当は来年かな?って思っていたんだけど、ある偶然の縁で、この場所をみつけて。
母もまだ、現役の仕事をしたいって。
で、「ここ、いいんじゃない?」ってなって、弟も協力してくれて。
本当は来年(2023年)からの資金繰りだったんだけど、場所が見つかったので、今年はじめちゃって。
ないない尽くしではじめたから、店は全部自分たちでつくったの。
このキッチンをつくったのも息子だし。職人さんが入ったのはトイレだけか。トイレも本当に便器だけ。
内装はみんなで。椅子を探してきたりして。
恵さん:息子(良さん)も娘も、激しい性格じゃないから、 家族でのんびり働きたいねって。
前から話していたの、みんなで。
お客さんたちも、のんびりできる店をつくりたいねって言って。
だから、お兄さん(筆者)がこの場所にのんびりいてくれるのは嬉しいの。笑
元々、そんな店としてつくったから。
║新天地のこの場所で、鈴屋を守ってくれるのは地元の人たち。
恵さん:そしたら今は、地元の方々がとても応援してくれていて。
毎日のようにお庭のお花を届けてくださる方もいらっしゃったり。
店内のお花には困ったことがありません。笑 すごく感謝しています。
恵さん:「美味しかったよ」って、わざわざ声をかけてくださる方もいて、とても嬉しいし、がんばろうと思えます。
良さん:ご年配のご夫婦も多いよね。ゆっくり飲んで食べて。 週末は朝からも多いからね。
恵さん:朝、お酒飲まれる方もけっこう多いですよ。
知らない場所でどうかなって心配だったけど、息子は最初に知人とかSNSで宣伝しなかった。
やっぱり最初に、わーってこられて、「こんなのか…」って地元の人に思われちゃったら嫌だから。丁寧にやりたいって。
毎日の定食メニューを変えるのも、常連さんがほとんどだから。 1日1日「飽きないように」って、がんばっている。
║人を喜ばせるのが飲食店。コックさんを、子どもたちのなりたい職業に。
— 店主の良さんからも、お店をはじめた想いをきかせていただいて、よろしいですか?
良さん:前は都心の店で店長やっていて。あくせく働いていて、毎月、桁の大きい金額を売上げていました。
良さん:でも、労働時間が最低12時間。結局「俺らが勝手に働いてるんじゃん」って感じなんですけど。
飲食店って結局そうなっちゃうんですよ。
「12時間働いて当然。朝から夜中まで。終電で帰りましょう。それが修行時代です」って。
そもそも僕の夢は、なりたい職業に10位とは言わないまでも、12位くらいまでにコックさんに入ってほしい。
やっぱり健全な労働形態をつくるためには、それは今のままではいけない。
あと、「コックさんは喜ばれる職業だよ」ってみせたいので、
今は一生懸命、鈴屋をお客さんが喜んでもらえるような場所にしたい。
働く家族や仲間が「飲食店やっててよかった。」って思えるように。
飲食店を営む人の多くは、最初は同じ想い。
だけど、やっぱりみんな疲れ果ててやめていく。
疲れ果てている状態じゃ、人を喜ばせる職業なのに、喜ばせられるわけないですし。
悪循環になって、お客さんも満足してないから、つんとして帰って、こっちもまた疲れ果てて。
そういう悪循環をなくしたいんです。ここは本当に最高のスタートだったと思います。
║「美味しく、楽しく、ゆったりと。」鈴屋らしいフルサービスで。
— 地域の常連さんもいれば、高尾や高尾山に来る一見さんもいると思います。お客さんにとってこんな場所にしたいとか、良さんの想いはありますか。
良さん:うどんのお店なんですけど、提供するのはうどんだけじゃなくて。
何でも食事できて、お茶もして、一軒でゆっくり楽しめる内容にしてるつもりなんです。
1日を詰めて、「お昼時なんで、お客さん、相席してください」ってのは一切やりたくない。
ある程度、来てくれたお客さんには入ってもらいたいという想いはありますけど、ギチギチにはしたくない。
3名様いらっしゃたら「カウンター移動してください」とかはありますけど、無理矢理に席をつくってとかはしたくない。
ー やっぱり「ゆっくり」とか「ゆったり」がお店のキーワードなんですね。
良さん:コロナっていうのもありますし。
コロナをきっかけに、お店のあり方を考えられたということもあります。
コロナになる前に独立する予定で、前の店の仲間とやろうって言ってたんです。
そしたらコロナになっちゃって、融資とか全然打ち切りで、審査もしませんって状態だった。
それから2年間くらい時間が空いたんですね。
あくせく働いて、めっちゃ働いて儲けようというより、「まずはお客さんに喜んでもらって、愛してもらって」という想いになって。
この2年間があって本当によかった。営業の仕方を考えられた。
いまは本当に、常連さんのお陰で、平日の方が安定していて。
とにかく、殺伐としたイメージを飲食店にもってほしくない。
「美味しくて・楽しくて・ゆったりできて」っていうお店でありたい。
「値段が安くて・早くて」は、牛丼屋さんがあるので、一番に任せておけばいい。
それだったら、うちなりのフルサービスを。
良さん:かと言って、レストランみたいにきっちりしたサービスではなかったりする。
ちらっとおしゃべりしていたら、お客さん呼んでるのに気づかないとかあるんですけど、
そういうところも個性として、可愛がってくれるお客様がいてくださるので。笑
その方たちの要望には、できる限り100%応える。
恵さん:「来てよかったな」って思われたいよね。
║お店は、費用対効果じゃない。「いつでも鈴屋はやっている」、その安心感をお客さんに。
ー ありがとうございます。ちなみに、朝早くからモーニングを提供しているのは、どんな想いがあるのでしょうか
良さん:最初は飲食店を始める前に、お客さんが何を求めているのか考えた。
そしたら、飲食店経験が長い僕は、僕なりの考えがあるし、母はお客さん目線からの考えもある。
すり合わせていったら、「モーニングをやろう、挑戦してみよう」ということに。
モーニングがあったから、地域の方が来てくれたりってのもあるのかな。
良さん:これが、うどんだけだよってところだと、出会えない人もいたかもしれない。
食べれる幅が広ければ広いほど、当然お客さんも嬉しいと思うので。クオリティが下がらねければ。
朝の時間、どうせ準備をしないといけない。
それだったら、1人でも2人でも便利に利用してくれるお客さんがいるんだったら開けてようねって。
こういうアットホームな店なので、利益率とか費用対効果とかは、あんまり僕は大事じゃないと思っていて。
まずは、いつでも来てもらえるようにしたい。お客さんが8-10時台に入らないから閉めちゃうじゃなくて。
「お店が開いてる」ってだけでも、来ていただいているお客さんにとっては安心なのかなって。
飲食や時間を過ごす場所に何か困った時に、「鈴屋はやっている」って思ってもらえていたら、
実際に来ていただかなくても役には立ててるのかなと思ってる。
逆に、一見無駄に思えることをやってたからこそ、常連さんの皆さんは気にして来てくれるのかな。
これが「はい、休憩でーす。はい、ラストオーダーです」って、きっちりやっていたら、来ていないお客さんもいると思う。
「ここはずっと空いてるんだ」ってなると、飲食の場所を探す時に、絶対お客さんはうちが選択肢に入ってくる。
15時で閉まっちゃうとしたら、14時前だったら、大体のお客さんは行かない。遠くから来る場合だと特に。
「いつでも来れる」ってのは大事かな。
ー けっこう長い時間、営業してくださっていますよね。
良さん:僕は慣れちゃってるんで。サラリーマンの方の仕事は、逆に僕はできない。
サラリーマンの方は8時間で終わるけど、僕らの仕事は多少長くても自分のペースでできるので。
疲れ方がちょっと違うんですよ。体力は使うかもしれませんけど。
恵さん:嫌な同僚がいるわけじゃないし。笑
最近は、ちょっと早くに上がれる時は、順番にあがったり。
ー なるほど、ここは家族の連携プレーもできますね。
恵さん:で新しく、店の仲間に響くんがはいったり。また、美佳さんが赤ちゃん生まれちゃったら、色々考えないとね。
║鈴屋を通して、やりたいことを探していく。高校生の妹さん。
—じゃあ次は、妹さんのお話を伺いたいと思います。最初はお母さん(恵さん)からのお誘いだったんですか?
妹さん:そうですね。正直、ちょっと不安だったんですけど。何もしないわけにはいかないので。
いつかどっかで働かないといけないし、練習として働かせてもらえたらと思って。
—今、高校生なんですよね。通信制の高校に通っていると伺いました。
この店やってて、「自分成長したな」とか「身になったな」って思えることはありますか?
妹さん:身になってると思います。前はもっと話せなかった。人と話すと緊張がマックスになる。
恵さん:ずいぶん変わったよね、年齢もあると思うんだけど。
元々は相手のことを気にしすぎて、優しいので。姪っ子の面倒とかも見ているよね。
妹さん:人とある程度話せるようになったことと、やっぱり体力がつきました。
ー 楽しいなとか、やってて良かったなって思える場面はありますか?
妹さん:自分が仕込んだ食べものとかで「美味しい」って言われると嬉しくて。
兄のお手伝いも楽しいです。
ーこれからやってみたいこととか、鈴屋でやってみたいことはありますか?
妹さん:うーん。料理はやっぱり兄がすごいので、私は難しいかなって思っていて。笑
教えてもらってやるのは楽しいけど、自分で考えてやるってところまではいかないかな。
良さん:ちなみに、妹はtwitterをやってて、twitterフォローしてる人が、この店に来ようとしてくれていたり。
twitterお休みしていると心配して連絡してくれる方もいるよね。
https://twitter.com/cococo20041124/status/1576001268312834048
良さん:あとは、「やりたいことを探すこと」かもしれない。
妹さん:そうだ。
良さん:一つのことに熱くなったり、こだわりをもったりっていう経験が少ないので、
「お客さんに喜んでもらえるのが嬉しい」ってのも、これもまた一つのステップだと思うんです。
恵さん:本当は絵が好きなんですよ。小さい時から油絵もやっていたし。
ー絵は今も描くんですか?
妹さん:はい。今も描いています。
║お客さんのために、いつも真剣に。
良さん:私たちは家族ですけど、お客さんにお出しするものなので、妹だからって甘やかすことはできない。
だから、本番中は緊張感をもって、やってくれてる。
俺もニコニコ「こうだよ〜」ってやってる暇はないし、よく耐えてやってくれてるなと。
恵さん:この子が真面目にやってるから、他の人も真面目にやらなきゃって。
大人しいけど、意外と娘が要になっている。本人は自覚はないかもしれないけれど。やっぱり家族だとたるんでくる。
娘がピシっとやっているので。「ちゃんとやんなきゃな」って思うね。笑
あんまり言われると、プレッシャーかな。笑
—家族それぞれの想いがあって、この鈴屋があること。
そして、鈴屋ファミリーが大切にする、豊かな日常が伝わってきました。ありがとうございました。
║インタビュー後記:暮らしの場所としての鈴屋
鈴屋のはじまりのストーリー、皆さんいかがでしたでしょうか。
Udon Cafe 鈴屋は、私が高尾に引っ越してきた、ちょうど約1ヶ月後にオープンしたお店。
そのタイミング自体にも、最初から親近感を感じていたお店でした。
今の私にとって鈴屋は、高尾にあるもう一つの実家のような場所です。
1週間、顔を出さない時があれば、鈴屋のご家族から「どうしてたの?久しぶりね」と心配してくれます。笑
まだオープンして間もない鈴屋ですが、
私や地域の人にとって既に、単なる飲食店ではなく、日々の暮らしの場所として存在しているようです。
何故そのような店ができたのか、今回のインタビューを通して、その一端を知ることができました。
かと言って、高尾に来る一見さんも多くご来店されており、
地域だけに密着しているような窮屈なお店でもありません。誰でも楽しめるお店です。
「美味しく、楽しく、ゆったりと。」
のんびり豊かな、フモトの暮らしの時間を味わう場所として、ぜひ鈴屋に足を運んでみてください。
鈴屋は、いつでも空いていますよ。(月曜日は定休ですので、お気をつけて)
Udon cafe 鈴屋
所在地: 〒193-0844 東京都八王子市高尾町1513−1 プレーンフィールド高尾 1階
営業時間:8:00 〜 20:00 *定休日 月曜日(月曜祝日の場合、火曜日休日)
電話: 042-673-7751
Instagram:https://www.instagram.com/suzuya0617/
║マップ
写真・聞き手(文)/ 内山 裕介
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