リモートワークが普及し、「都心に住み続ける必然性」が薄らいでいる今、移住先として「高尾」が熱い視線を集めています。
「高尾山」という日本有数の観光地として知られるこの街ですが、「生活の場」としてはどうなのでしょうか?
「都心へのアクセスも捨てがたい」
「でも、豊かな自然の中で子育てがしたい」
「生活コストは抑えたい」
そんな、相反するような願いを同時に叶える「とかいなか」(都会+田舎)の適地として、高尾は非常に有力な選択肢です。しかし、もちろん良いことばかりではありません。

この記事では、高尾への移住を真剣に検討している方に向けて、他のサイトでは深掘りされていない「具体的なコスト比較」「詳細なエリア特性」「リアルなデメリット」まで、フモト民(高尾在住11年以上)の視点で徹底的に解説します。
▼記事を読むのが面倒な人のためにAI解説動画を作りました。読み間違いはご容赦くださいませ。
🏔️なぜ今「高尾」? 移住先として選ばれる5つの理由(メリット)

高尾が多くの移住者、特に仕事とプライベートの両立を目指す30代・40代のファミリー層やリモートワーカーに選ばれるのには、明確な理由があります。
1.【アクセス】都心へ座って通勤可能!「中央線・京王線」で快適アクセスの圧倒的強み
高尾移住の最大のメリットは、この「アクセス利便性」にあります。豊かな自然環境にありながら、都心へのアクセスが驚くほど良好です。
JR中央線(特別快速・通勤特快停車)

- 多くの列車が始発・終着するため、朝のラッシュ時でも座って通勤できる可能性が高いです。これは、満員電車でのストレスを抱える都心通勤者にとって計り知れないメリットです。
- 新宿駅まで 約45分~55分(特別快速・通勤特快利用時)
- 東京駅まで 約60分~70分
京王線(高尾山口駅 始発)

- JR高尾駅から1駅隣の「高尾山口駅」が始発。京王線を利用する場合も座れる可能性が非常に高いです。隣駅の西八王子から折り返しで座ろうとする乗客は全て高尾駅で降ろされます。
- 新宿駅まで 約50分~1時間10分程度(特急利用、列車により異なる)
- 運賃がJRより安価なため、交通費を節約したい人にも選ばれます。
「週に2~3回出社」というハイブリッドワーカーにとって、「往復の通勤時間を座って読書や自己研鑽に使える」環境は、まさに理想的と言えるでしょう。
2.【自然環境】高尾山だけじゃない! 日常にある豊かな緑と水

「高尾」と聞いて高尾山を思い浮かべるのは当然ですが、移住者にとっての魅力は「非日常の観光地」ではなく「日常にある自然」です。
- 高尾山が「裏山」感覚
思い立ったらすぐにハイキングやトレイルランニングが楽しめます。 - 公園の多さ
陵南公園のような広大な公園や、児童公園が点在しており、子どもの遊び場に困りません。 - 清流「浅川」
川沿いは絶好のランニング・サイクリングコース。夏には水遊びも楽しめます。
都心では味わえない、四季の移ろいを肌で感じながら生活できる環境は、子育て世代にとっても大きな魅力です。
3.【生活利便性】駅周辺で完結! 大型商業施設と揃った買い物環境
「田舎は買い物が不便」というイメージは、高尾には当てはまりません。特に高尾駅南口の発展は目覚ましく、生活必需品は駅周辺でほぼ全て揃います。
| 施設名 | カテゴリ | 特徴 |
|---|---|---|
| イーアス高尾 | 大型複合商業施設 | スーパー、ファッション、雑貨(ニトリなど)、飲食店、クリニックモールが揃う。休日はここで全て完結できる。 |
| 京王ストア 高尾名店街 | 京王ストアは駅直結(1F) 高尾名店街は徒歩1分 | スーパー(京王ストア)、100円ショップ、飲食店など。帰宅時の買い物に便利。 |
| その他スーパー | スーパーバリュー、ALPS、TAIRAYA | 複数のスーパーがあり、選択肢が豊富。 |
| ホームセンター | コーナン、CAINZ | 近隣に大型ホームセンターがあり、DIYや園芸用品も揃う。 |
4.【コスト】都心より安い! 家賃相場と物価のリアル
高尾移住の現実的なメリットとして「生活コストの削減」が挙げられます。特に住居費は、都心と比較して大きな差が出ます。
【参考】都心(杉並区)と高尾(八王子市)の家賃相場比較
(※2025年11月時点の目安)
| 間取り | 杉並区(例:阿佐ヶ谷駅) | 八王子市(例:高尾駅) | 差額(月) |
|---|---|---|---|
| 1LDK | 12.5万円 | 7.5万円 | -5.0万円 |
| 2LDK | 16.5万円 | 9.5万円 | -7.0万円 |
| 3LDK | 21.0万円 | 12.0万円 | -9.0万円 |
都心で2LDKに住む家賃で、高尾なら3LDKの広い家に住むことも可能です。浮いた費用を教育費や趣味、貯蓄に回せるのは大きな利点です。
5.【子育て】のびのび育つ環境と「東京都」の手厚い支援
高尾は「八王子市」に属します。つまり、「東京都」の充実した子育て支援制度を、豊かな自然環境の中で受けられる点が最強のメリットです。
- 高校生までの医療費助成
所得制限なしで、高校3年生までの医療費(保険診療の自己負担分)が助成されます。 - 充実した保育・教育環境
認可保育園、幼稚園、児童館が多数あります。特色ある教育機関も存在します。 - 妊娠・出産サポート
八王子市独自の「すくすく☆メール」による情報提供や、産後ケア事業も充実しています。 - 自然の中でのびのび
公園や川、山といった「本物の自然」が、子どもの感性や体力を育む最高の環境となります。
😥移住後に後悔しないために知るべき「高尾」のリアルな注意点(デメリット)

魅力的な高尾移住ですが、事前のリサーチ不足は「こんなはずじゃなかった」という後悔に繋がります。以下のデメリットを許容できるか、必ず自問自答してください。
1.【気候・環境】冬の寒さと「虫」の問題
- 冬の寒さ
高尾は内陸部特有の気候もあり、冬は都心(特に23区)より確実に寒いです。気温は2~3度低いと考えましょう。裏高尾エリアでは水道管の凍結対策が必要な場合もあります。 - 雪
年に数回、都心では雨でも高尾では雪が積もることがあります。スタッドレスタイヤは必須ではありませんが、持っていると安心です。 - 虫
自然が豊かであることの裏返しです。特に夏場は、都心では見かけないような虫(アブ、カマキリ、カメムシ、コガネムシなど)に出会う機会が増えます。虫が極端に苦手な人は覚悟が必要です。
2.【車社会】場所によっては「車が必須」になる可能性
高尾駅周辺(特に南口)は徒歩や自転車でも生活できますが、少し駅から離れたエリア(長房、元八王子など)や、高台の住宅地になると話は別です。
- 坂が多い
高尾は山麓の街であり、坂道が多いのが特徴です。電動アシスト自転車が活躍します。 - 車前提の立地
物件価格が安いエリアは、車がないとスーパーへの買い出しや子供の送迎が不便な場合があります。 - 結論
「駅近物件」を選ばない限り、車は1台あった方が生活の質(QOL)は格段に上がります。
3.【買い物・娯楽】「何でもある」わけではない
生活必需品は揃いますが、「都心と同じ感覚」でいると不便を感じます。
- ファッション・雑貨
イーアス高尾にニトリやユニクロなどはありますが、百貨店や特定のセレクトショップ、ブランド店はありません。そうした買い物は「立川」や「新宿」まで出る必要があります。 - 飲食店
深夜まで営業している飲食店や、多様なジャンルのレストランは都心に比べて圧倒的に少ないです。外食中心の生活は難しくなります。
4.【観光地ならでは】休日の混雑
高尾山は世界一の登山客数を誇る山です。特に紅葉シーズン(11月)の土日は、駅周辺や駐車場、国道20号線が非常に混雑します。
「休日は静かに過ごしたい」と思って移住すると、このギャップに驚くかもしれません。混雑する時期や場所を避ける「地元民の知恵」が必要になります。
5.【地域コミュニティ】「田舎」の側面も
高尾は新旧の住民が混在するエリアです。新興住宅地は移住者も多くフラットな関係を築きやすいですが、北口の旧来からの住宅地や周辺エリアでは、地域のお祭り、自治会活動、消防団など、昔ながらの「ご近所付き合い」が残っている場所もあります。
これはデメリットではなく「安心感」にも繋がりますが、都心のような希薄な人間関係を望む人にとっては、少し戸惑うかもしれません。
🗺️【エリア別】あなたはどこに住む? 高尾駅周辺の住みやすさ徹底比較
「高尾」と一口に言っても、駅の北口と南口、さらに周辺エリアでは住環境が大きく異なります。あなたのライフスタイルに合うのはどこか、比較検討してみてください。
高尾駅周辺エリア比較表
| エリア | 高尾駅 南口 | 高尾駅 北口 | 周辺エリア(長房・元八王子など) |
|---|---|---|---|
| 雰囲気 | 新興住宅地。区画整理され道が広い。ファミリー層が多い。 | 昔ながらの街並み。甲州街道沿いに商店が残る。落ち着いた住環境。 | 自然がより豊か。高台の住宅地や、昔からの集落が混在。 |
| 買い物 | ◎(イーアス高尾など) | △(個人商店) | △(車必須) |
| アクセス | ◎(駅までフラットアクセス) | ◎(駅まで近い) | ×(駅までバス or 車が基本) |
| 家賃 | やや高め | 標準 | 安め |
| 車の必要度 | 低(無くても生活可能) | 中(あると便利) | 高(ほぼ必須) |
| おすすめ | 利便性重視のファミリー、共働き夫婦 | 落ち着いた環境を好む人、単身・DINKs | 車持ち、より自然に近い環境を望む人、広い家を安く借りたい人 |
1. 高尾駅「南口」エリア
町名:初沢、東浅川(南側)、狭間
再開発が進み、非常に住みやすいエリアです。「イーアス高尾」の存在が大きく、買い物、病院がコンパクトにまとまっています。道も平坦で広いため、ベビーカーを押す子育て世帯に絶大な人気があります。
2. 高尾駅「北口」エリア
町名:高尾、廿里、東浅川(北側)
甲州街道(国道20号)が走り、宿場町の面影が残るエリア。南口のような派手さはありませんが、その分静かで落ち着いた生活ができます。古くからの住民も多く、地域との繋がりを感じたい人に向いています。
3. 周辺エリア(長房、元八王子など)
町名:元八王子、長房
駅からはバスや車でのアクセスが基本となりますが、その分、家賃や物件価格は抑えられます。より自然を身近に感じられ、広い戸建てや家庭菜園付きの物件なども見つかりやすいエリアです。「利便性」よりも「環境」を最優先する人向けの選択肢です。
💰【お金の話】高尾移住で使える「支援金」と「子育てサポート」

移住にはお金がかかりますが、条件次第で利用できる公的な支援制度があります。高尾(八王子市)に関連する主な制度(2025年11月時点)を紹介します。
1.【要注意】国の「地方創生移住支援事業」は使える?
結論から言うと、八王子市は多くの場合「国の地方創生移住支援事業」の対象外ですが、一部対象となるケースもあり得ます。
移住支援金の制度は、「東京23区に在住または通勤している方」が「東京圏外」または一部指定地域へ移住し、「新規就業(マッチングサイト経由)」または「起業」をした場合などに最大100万円が支給されるもので、要件や対象エリアは年度ごとに変動します。
- 東京23区に在住または通勤していたこと
- 八王子市に「移住」すること
- 移住先(八王子市)で「新規就業」または「起業」すること(マッチングサイト経由の就業等)
【重要】テレワーク移住の取り扱いについて
「リモートワークを機に移住」を検討している場合、制度の対象となる要件が極めて細かく定められています。企業勤務を続けつつ自己都合で移住するテレワークケースが「対象」となるか否かは、年度ごとの国や市の要件次第であり、自治体によって判定が異なります。
そのため、「原則対象外」とは言い切れず、少なくとも事前に必ず市へご相談いただくことが不可欠です。
2. 子育て世帯必見! 八王子市の充実サポート制度
移住支援金よりも、こちらの「恒常的な子育てサポート」の方が長期的なメリットが大きいです。
医療費助成(マル子・マル乳・マル青)
東京都共通の制度で、高校生(18歳卒業まで)を対象に、所得制限なしで医療費が助成されます。保険診療の自己負担分に対して助成があり、年度や自治体ごとに控除額などの細かな違いはありますが、八王子市では2025年11月時点でも適用されています。
出産・育児サポート
・新生児聴覚検査の費用助成が利用可能です。
・産後ケア事業として、宿泊型や日帰り型の助産師によるケアや育児相談が受けられます。
・「すくすく☆メール」など、妊娠週数や子どもの月齢に合わせた子育て情報を届けるサービスもあります。
参考:八王子市 子育て応援制度の詳細ページ(産前産後ケア含む)
保育園事情
八王子市は待機児童対策を強化しており、市全体では待機児童数減少傾向にあります。ただし、高尾エリアの特に人気の0~2歳児クラスなど、地域や園により希望が叶わない場合もあるため、入園を希望する場合は個別の確認が必要です。
【新たな支援制度】
2025年10月から、東京都の認定ベビーシッター事業を活用した低料金のベビーシッター利用助成制度が八王子市でも利用開始予定です。保育園入所待機児童の代替支援として、1時間あたり150円(税込)程度でベビーシッターを利用できます(詳細は市の公式発表を確認ください)。
3. 住宅購入・リフォーム支援
中古住宅の購入やリフォームに対しても、耐震化助成や省エネ改修に関する補助金が用意されている場合があります。家を購入する際は、八王子市の「住まいの情報」ページを確認しましょう。
🙋♀️ 高尾移住 Q&A|よくある疑問を解決

- Q実際の治安はどうですか?
- A
非常に良好です。高尾は八王子市内でも特に犯罪発生率が低いエリアとされています。観光地であるため日中は人目も多く、南口はファミリー層が多いため、地域の目も行き届いています。夜間は駅周辺以外は暗く静かになりますが、治安の不安は少ないでしょう。
- Q移住者の割合は多い? 地域に馴染めますか?
- A
多いです。特に南口の新興住宅地は、その多くが都心などから移住してきた子育て世帯です。そのため「移住者だから」と特別視されることはありません。北口や周辺エリアは古くからの住民もいますが、高尾山という開かれた観光地がある土地柄、比較的オープンな気質と言われています。
- Q病院(総合病院・クリニック)は充実していますか?
- A
充実しています。高尾駅周辺には内科、小児科、皮膚科、歯科、整形外科など多様な診療科を持つクリニックが多数あります。駅南口には「イーアス高尾」内のクリニックモールもあり、多くの専門医が対応しています。総合病院も電車やバスでアクセス可能な距離にあり、医療体制は万全です。
- Qハザードマップ(水害・土砂災害)は大丈夫?
- A
注意が必要なエリアもあります。高尾は山と川(浅川)に近い街です。
・水害:浅川沿いの低地は洪水浸水想定区域に含まれる場合があります。
・土砂災害:山の麓や急傾斜地の近くは土砂災害警戒区域に指定されている場合があります。移住前は必ず八王子市が公開しているハザードマップを確認し、検討中の物件の安全性をチェックしましょう。
✅ まとめ:高尾移住は「都会の利便性」と「自然」を両立したい人最強の選択肢

高尾移住は、全てのメリットを享受しつつ、いくつかのデメリットを許容できるかどうかが鍵となります。
【高尾移住が向いている人】
- 「都会と田舎の”いいとこ取り”」がしたい人
- リモートワーク中心だが、週1~3回の都心通勤(座って)が必要な人
- 豊かな自然環境の中で子育てをしたいファミリー世帯
- 登山、ランニング、釣りなどアウトドアが趣味の人
- 都心より広い家に、コストを抑えて住みたい人
【高尾移住が向いていない人】
- 冬の寒さや虫が極端に苦手な人
- 車の運転が絶対に嫌で、駅近以外の選択肢がない人
- 「都会的な刺激」(多様な飲食店、ファッション、夜の娯楽)を最重要視する人
- 観光地の混雑が我慢できない人
高尾は、「生活の質」を本気で上げたいと願う人にとって、都心から最も近い理想郷の一つです。

この記事を参考に、まずは一度、観光ではなく「生活の場」として高尾の街を訪れてみてはいかがでしょうか。
