ひょうたんハウス  〜 ふるえる音楽に出会う、もうひとつの家 〜

フモト暮らしの探索記 内山です。今回は高尾にある「ひょうたんハウス」をご紹介します。
この場を営むのは、高尾に住むひょうたん笛の奏者、ひょうたん たけしさん。時折り人が集い、素敵な音楽鳴り響くこの場所ですが、一体どんなところでしょうか。フモト同盟にてレポートします。

ひょうたんハウス
〜 ふるえる音楽に出会う、もうひとつの家 〜




ひょうたんハウスとは

高尾駅から高尾山口駅方面に、甲州街道沿いを歩き、上椚田橋の先にある落合地区と呼ばれる場所に、ひょうたんハウスはあります。ここは、ひょうたん たけしさん(以下、たけしさん)ご家族の住むご自宅でもあり、家の一部を音楽スタジオやカフェの空間にして、他の人や地域にも不定期に開放している場所です。

オーナーのたけしさんは、ひょうたん笛奏者の音楽家。

他にも、音楽イベントやウクレレ教室の開催など、幅広い音楽活動をされています。
また、くるくる紙芝居、珈琲焙煎、高尾山ガイドウォーク、ひょうたんランプづくりのワークショップなど、様々なことを手がけ、たけしさんは“遊びと暮らしの多芸家”とも呼べるかもしれません。

たけし楽器音楽会

ひょうたんハウスを象徴するのが、この場で開かれる音楽ライブ「たけし楽器音楽会」。
民族楽器など、独創的な音楽奏でるアーティストたちの、気さくな音楽ライブです。

(写真:音楽ユニット『みずたまだんご』@ひょうたんハウス)

他にも、わらべうたの会やウクレレ教室など、様々な音楽イベント・音楽教室が開かれます。

ひょうたん縁市

また、音楽ライブと同時に楽しめるのが、ひょうたんハウスの庭で開かれる「ひょうたん縁市」。
たけしさんがこれまで出会ったお店や作家の皆さんによる小さなマルシェです。美味しいものやユニークな品物が並びます。

カフェ & 民族楽器ギャラリー

そして今年3月から、カフェもオープン。
ひょうたんハウスで珈琲を味わいながら、民族楽器に触れてみたり、よりのんびりと時間を過ごせるようになります。
毎月の第1週目と、イベントや季節に応じて営業予定です。
珈琲は、たけしさんが焙煎された「たけしこ珈琲」。珈琲の炭火焙煎も体験できます。(要予約)




ひょうたんハウスの世界

ではここから、たけしさんへのインタビューも交えて、ひょうたんハウスに込められた想いやその世界観に迫っていきたいと思います。

世界中で、ふるえる音楽に出会って。

学生時代からギターを弾き、音楽を愛するたけしさん。
ひょうたん笛の奏者となり、現在の活動をはじめたきっかけには、5年半に亘った旅がありました。

たけしさん:
(新卒入社した会社を)ちょうど辞めるタイミングで、ちょっと世界に旅に出てみようって思ったんですね。
元々自然が好きで、自然を見にいきたいって思って、日本を出ていきました。

 

たけしさん:
だけど実際に旅を始めてみると、人と音楽が楽しかったんです。
色んな人と交流して、現地の歌を歌ったりしていたら、そこで民族楽器って面白いなって。

たけしさんは、新たな場所で民族楽器と出会っては練習し、また次へ移動しと言うように、世界を旅していきました。
そこで様々な民族楽器に出会い、最後に出会ったのがひょうたん笛。
その時、たけしさんの人生にとって大切な別れがあったのですが、偶然耳にしたひょうたん笛の音色に心を打たれました。

たけしさん:
泊まっていた宿で音楽を聞いてたら、「なんだ!? この哀愁ある音色は…」って思って、
宿の人に質問したら、「ひょうたん笛。俺たちの故郷の楽器だよ」って教えてくれたんです。
その場所に行ったら手に入るって言うから、「じゃあ俺、この国出てすぐに行く」って言って、その村に向かいました。

ひょうたん笛は、中国の少数民族タイ族の民族楽器。
たけしさんは、タイ族の住んでいる村に向かい、古い調べを学びながら笛を毎日練習します。
そして、中国の大会で賞を受賞するまでに至りました。
日本に戻ってから現在まで、様々な音楽仲間とコラボしながら、ひょうたん笛を奏でています。

(写真:音楽ユニット『うたのわ』& 尾引浩史さん)

現在は、ひょうたん笛などの民族楽器の演奏だけでなく、日本の伝統音楽も楽しめる「わらべうたの会」も開催。
たけしさんは、古くから伝承された本当にいい音楽は、心がふるえるんだと語ります。

たけしさん:
やっぱり、ふるえるんですね。
音楽に限らず、自然の中で、自然にしっかりできたものって。
高尾の山もそうですが痺れます。心にしっくりくるという感じですかね。




これまでの出会いが、巡るご縁に。

演奏者としての音楽活動だけでなく、ひょうたんハウスを足場にして、人と人の交わる場づくりをするたけしさん。
はじめた想いを伺うと、そこには、これまでの豊かな出会いがありました。
日本に戻ってからのたけしさんは、国内でも色んな音楽ライブに出演されてきました。そこで出会い共演してきたのが素敵な音楽仲間たちです。

(写真:音楽ユニット『西荻オールスターズ』)

たけしさん:
昔は全国各地に、自分で音楽活動のツアーも行っていたけど、その時に本当にすごい人たちと共演してきたんですよね。
その中で気さくに高尾に来てくれる人たちもいて、そういう人を高尾の人たちにライブで紹介できたらいいなって始めたんです。

また、民族楽器の出品やくるくる紙芝居の読み聞かせ等で、色んなマルシェやお祭りにも参加してきました。
音楽家だけでなく、素敵なお店、アーティスト・作家の方々との縁にも恵まれたとお話しされます。

たけしさん:
ひょうたん縁市のほうも、とにかく本当に素晴らしい人がいっぱいいるから、みんなに紹介したいんですよ。
「これ、美味いでしょ?」みたいな、そんな感じです。
その後、いろんなところで勝手に友達になったりして、そこでまた新しいことが生まれたって話をきくと嬉しいんですよね。

(写真:音楽ユニット:『モーフの旅』、絵: 宮下 昌也さん)

たけし楽器音楽祭に定期的に出演する、作曲家でギタリストのチャーリー高橋さんも、ひょうたんハウスの魅力をこのように語ります。

チャーリー高橋さん:
ひょうたんハウスは、色んな人が出入りして、そこで知り合ったり出会ったりします。
音楽的にもそれ以外も、各地方で色んなことをやっている人が来て、高尾や周辺地域から色々来る人が混じって一緒にやるのがすごくいいんです。

たけし楽器音楽祭のユニークさは、参加している子どもの様子からも見えてきます。

(写真:音楽ユニット『ロバの音楽座』と、ライブ参加者の子どもたち)

チャーリー高橋さん:
ひょうたんハウスは、お客さんとの距離も近くて、ライブ中に子どもも走り回っています。
普通、ライブハウスには子どもがいません。地域のお祭りっぽいところがあって、毎年ライブをやっていくと、子どもが育っている様子を見るのが楽しみだったりするんです。

たけし楽器音楽会 沢田穣治と仲間たち ブラジル音楽スペシャル(2022.09.17)

素敵な音楽仲間の集う「たけし楽器音楽会」の様子を、少しでも垣間見えるように、主催者及び演奏者に特別に許可を頂き、ライブの一部を撮影しました。

2022.9.17 開催 『たけし楽器音楽祭 Vol.19 沢田穣治祭り』
◆出演:沢田穣治(bs) 中西文彦(gt) 沼直也(dr)Lico(vo)
ChoroClubのコントラバス奏者であり、錚々たる有名音楽家との共演!
プロデュースを果たす音楽家『沢田穣治』は、なぜかときどき高尾の麓『ひょうたんハウス』にふらりとやってくる。
今回もビッグゲストと共にブラジル音楽を中心に、沢田祭りはのろしをあげるのだった!




全てのはじまりは、「何となく」から。

ここまでひょうたんハウスの魅力に迫ってきましたが、
たけしさんは、何か明確な目的や計画があって、活動されているわけではありません。
今回、たけしさんにひょうたんハウスの活動の想いや考え方について、あらゆる角度で質問を試みました。
一方でたけしさんは必ず「何となくやってるだけ」と語ります。

たけしさん:
何も考えていないんですよ、基本的には。その都度その都度、丁寧に暮らしてるだけなんです。
例えば今は、子どももいるから、子どもを大切にしていますし。
「色んなことに対して丁寧に」って、それだけですよね。音楽もそうです。

現在、カフェの空間をつくっているのも、何か明確な目的があるわけでもありません。

たけしさん:
来る人が、来てしゃべって、リラックスして、楽しかったらそれでいいんですよね。
もちろん、運営上はお金のこととかもありますけど。出発点としてお金のことは考えないで、みんなが音楽聴いて幸せな想いになれる時間を優先させればいいって、あやこ(たけしさん ご夫人)とも話していまして。

 

でもその「何となく」は、単なる自己満足ではありません。
その感覚は、ごく自然にご縁を大切にする暮らしの感性から生まれてきているように感じます。

たけしさん:
これまでも、色んな人がひょうたんハウスに来てくれて、結局私がみんなに助けられてるんです。
ギリギリのところで生かしてもらえている感覚。みんなが自分から楽器を買っていってくれたりします。
「いつか、たけしさんと関わってみたかった」と言って、ウクレレ教室に参加してくれるのもそうです。
こういう風にグルグルまわってるなかで、なんか私のことも助けてくれてるイメージですよね。
あんまり深くは、考えていないんですけどね。





インタビュー後記:ふるえる音楽に出会う、もうひとつの家

ひょうたんハウスのレポート、いかがでしたでしょうか。
私自身、高尾に住むことになったきっかけの一つは、このひょうたんハウスでした。
はじめて高尾に来た約1年前、たけしさんに出会い、
ひょうたんハウスをご紹介いただき、豊かな暮らしの想像がふくらんできました。
現在の住まいの縁を繋げてくださったのも、たけしさんです。

移り住んだ後、ひょうたんハウスの音楽ライブにはじめて参加。
奏者のことも民族楽器のことも何も知らず、何となく参加したのですが、
言葉どおり、心がふるえました。

その穏やかに響き渡る生演奏は、
ふだんイヤホンでデジタル音楽を聞き流している私に、
まったく異なる音楽世界を体験させてくれました。

その後は、たけし楽器音楽祭が開かれる度に参加し、
この場を通して、たくさんの素敵な方々との出会いに恵まれています。
今では子どもたちにも、遊んでもらっています。笑

ふるえる音楽に出会う、もうひとつの家。
それが、私にとってのひょうたんハウスです。

何となく行ってみたいなと思われた方は、是非一度、訪れてみてください。
忘れていた豊かな感性や、豊かな暮らしへの出会いが、
あなたを待っているかもしれません。

写真提供:ひょうたん たけしさん
取材・文章:内山 裕介

ひょうたんハウスの営業情報

◆ カフェ営業日:毎月第1週目の火曜日~土曜日(11-16時まで)
* 営業日は、イベントや季節に応じて変更があります。Instagramもしくはメール(takeshi_seijin@hotmail.com)で事前要確認
◆ イベント最新情報:Instagramより。(次回のたけし楽器音楽会は、2023年 5月28日)

◆ 場所




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